目に見えている物全てが結果じゃないんだ。
積み重ねた思いはスポットライトで見えない闇の其処に確かに伝わっているのだから。

 数刻前、駅前の路上で大観衆を前にライブを終えた二人は誰もいない路上でギターをかき鳴らしていた。
 この場所は疲れた親父さん達が時々通りすがるくらいで滅多に人に足を止めてもらえる事はなかったが、ジュンとシンゴにとってはゆっくりと将来の事を語り合う事が出来た想い出深い場所であった。

 もうすぐメジャーデビューを控えた二人は初心に戻ろうと久しぶりにこの場所へやってきた。
 静かな路上で初めて二人で作った曲を歌い終わると、顔を見合わせ少し照れくさそうに笑いあう。

「こんな風に誰にも歌を聴いて貰えなくなってもさ、二人で一緒に頑張ろうな。」
「ああ。」
「―It's a very wonderful song.」

 突然遥か頭上から掛けられた英語に二人は一瞬にして石のように固まった。
 ゆっくりと見上げると、何時の間にか目の前には長身の青年が立っていた。
 北欧系なのだろうか、月光に照らされた肌が透き通るように青い。

「お、おい、 ジュン、お前、英語ちょっと分かるだろ…。」
「た、多分誉めてくれたんだと思うけど…。」
「!ああ…ごめん、あまりに聴き入ってしまって、一瞬日本語を忘れたよ。」

 青年は申し訳無さそうに言うと流暢な日本語に安堵のため息を吐く二人の前にしゃがみ込んだ。

「俺、この近くの整備場で働いているんだけど、昔はよくここで歌っていたよね?」

 まだ緊張がとれないのか、青年の問い掛けに二人は機械仕掛けの人形の様にコクコクと首をタテに動かした。

「音響機材なしでも、こんな遠くまで透き通った歌声が届くんだ、と驚いたものだよ。最近は聴こえて来なくなったから辞めてしまったんだと思っていたけど…続けてくれていて良かった。」
「…え?」

 本当に嬉しそうに目を細める青年に、シンゴが疑問符を投げ掛けた。

「俺も同じ様に夢をもって一応頑張ってるつもりだからさ…他に同じ様に頑張っている人が居るっていうのが心強かったんだ。」

 青年はそう言ってはにかんだ笑みを浮かべた。

「そうだったんだ…」

 誰も聴いていないと思い込んでいたこの場所でも、歌声は届いていた…。
 少し考え込むように黙り込んだ二人にそろそろ職場に戻らないとまた泊り込みになるから…と青年は告げるとゆっくりと立ち上がった。

「Do your best.Because a singing voice reaches even if an audience can't be seen from you. 」

 再び掛けられた英語に硬直する二人を見て青年は微笑むと暗がりの中へと走り去っていった。

「…なあ、ジュン、あの人さっきなんて言ってたんだ?」
「頑張れ、 たとえ君達から聴衆が見えなくても、歌声はちゃんと届いているから…だと思う。」
「…そっか。」

 夜空を見上げると、青く輝く月が自分達を温かく照らしていた。

「今日、ここに来て良かったな。」
「ああ。」

 月に照らされる彼等の瞳には力強い意思が宿っていた。
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リクで純真とヒューです。純真すっごい久しぶりに描きました!
勝手にメジャーデビューさせてスミマセン(爆)
そして兄さんがケツだけでスミマセン。
そして英語は多分うそっぱちです。英語だけはしっかりやっておけば…あああ…誰か正しいよさげなアイルランド英語に直してください(爆)
英語で喋ったのは多分兄さんの意地悪です(笑)
そして恥ずかしい話でスミマセン。

04/09/29


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