一諦めきれず、認められず、今日も夜の街を彷徨う。
もう繋がっていないと分かっているのに…
そこを抜け出してもあるのは虚しい感情だけ。

 夜の繁華街から少しだけ外れた一角。
 趣味の悪いネオンを点灯させ騒音に近いBGMとアナウンスを垂れ流す店内にミサキはいた。

 彼女の姿は明らかに浮いていた。
 こんな時間に男性客で賑わうスロット台の前に一人若い女性がいるというだけでも浮くだろう。
 それに加え引き締まった抜群のスタイルと美しい容貌は周りの男たちの視線を惹きつけて止まない。
 スラリとした足を組み直す度に付近の男達の視線はミサキへと泳いでいた。

 …ただ一人、隣に座っている無神経な男を除いては。

 モデルというバイト柄、ミサキはスタイルには多少なり自信を持っている…のに、この隣の男、ちょっと大胆な胸元へ視線をチラっと寄越す事すらしない。
 その上この男の台はミサキなら跳んで喜ぶような超激アツに突入しているにも関わらず、表情一つ変えずにただ機械的に打ち続けているのだ。
 回転するドラムを無表情のまま見つめる青い瞳は何処か冷たくて、正直ゾっと気味悪さを覚える程だ。
 だがそれと同時に端整な容姿を持つこの男に強い興味をもったミサキは相手の事など構わず声をかけた。

「ねえ、ちょっと。」
「…。」
「ねえ、聞いてる?」
「…。」
「ねえってば!シカトすんな!」
「…。」
「おーい!!!」

 目の前で大きく振られた手と、耳元で叫ばれた店内の雑音より喧しい声にヒューは僅かに顔を顰めると漸く視線をミサキへと移した。

「…何?」
「ねえ、なんかそっち凄いアツいみたいだけど、コツとかあるの?」
「コツって…それ以前にリール見えてるのか?」

 訝しげに言うヒューに対してミサキは逆に質問を返した。

「何よ、あんた見えるの?こんな早いのが?」
「これくらいの速度なら止まって見える。」
「ウッソ!マジ?目を凝らしても、7とかなんか変わった絵くらいしか見えないけど。」

 回るドラムを見ながら目を白黒させるミサキにヒューは苦笑しながら向き直った。

「あまりスロット詳しくないみたいだけど…どうして一人でこんな所に?」

 そう言って微笑むヒューの瞳には先刻までの冷たさはなく、寧ろ温かく優しい雰囲気が漂っていた。
 …その雰囲気の所為だろうか、本来なら誰にも明かさないような言葉がミサキの口から滑り落ちていった。

「ン…彼氏がね、スロット好きだからさ。少しでも、彼の事知りたくて。」
「じゃあその彼に直接聞けばいいじゃないか、コツを。」
「それが出来たら、苦労してない…。」
「何だ、元彼の話か。」
「…ど、どうして分かったのよ…!!」

 ヒューの口からアッサリと出た核心にミサキは動揺して椅子から半分体を浮かせた。

「スロットやってる人間の目の前に手を出すような奴が、彼氏に直接聞けないものなのかなって思っただけだよ。」
「わ、悪かったわね…。」
「まあ、それだけじゃないけど。」

 口を尖らせるミサキに苦笑しながらヒューは言葉を付け足した。

「俺も未練がましく生きてるから、なんとなく同じ雰囲気を感じただけだよ。」

 そう言う表情はどこか寂しげで…ミサキの胸を少し締めつけた。

「そっか…なぁんだ、寂しい人間同士だったってワケか。」

 ミサキは軽く伸びをするともう一度しっかり椅子に座リ直しヒューに微笑みかけた。

「さっきは邪魔しちゃって悪かったわね、お詫びに奢るからさ、これから何処か飲みに行かない?」
「奢って貰う程困っていないし、さっきの事は別に気にしてないから。」
「遠慮しなくてもいいのに!こう見えても私結構稼いでるんだから…あ、それにお兄さんからはちょっと貧乏な雰囲気を感じるわよ?」
「わ、悪かったな…。」

 貧乏という言葉に初めてヒューは動揺の色を浮かべたが、キッパリとミサキの誘いを断った。

「でも遠慮しとく。」
「え?なんでよ?」
「俺が欲しいのは傷の舐め合いや同情じゃないから…あんただってそうだろ?」

 そう言うとヒューは席を立ち、もしまた会った時にはコツを教えてやるよ、と言い残すとその場を後にした。

「…言ってくれるじゃない。」

 残されたミサキは、でも、その言葉に励まされたかのように…
 …ヒューが座っていた台に座り直すとスロットを打ち始めた。

「あんだけ出てたんだから、まだまだ出るわよね…!」


 それから数刻。
 ミサキは随分と軽くなったサイフを見つめ、深いため息をついていた。
 そしてヒューが席を立ったのはミサキの誘いを断る為ではなく、単にこの台が「引き際」だったからだというのを悟ったのだった。

「恋愛もスロットも引き際が難しいわ…。そういえばアイツの名前も聞き忘れちゃったな。今度逢ったら「引き際」…教えてもらわなきゃね。」

 そう言って微笑むミサキはどこか不敵だった。


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というわけで、ミサキ&ヒューです。
恐らくかなり年齢が近い二人だと思われるので、ちょっぴり大人の雰囲気出してみました。
最後に思いっきり落としていますが(笑)いつもよりちょっとカップリングっぽいお話になったような〜。
内容はミサキの歌詞をベースに話を考えてみました。恋人は携帯とバイクの寂しい大人カップル(爆)

ヒュー兄さんの動体視力はとてもスゴいです。集中すればきっと弾丸だってスローに見えるのさ!(殴)
そしてヒュー兄さんにとってスロットは「無尽蔵に金が引き出せる銀行(c)某イズルさんの弟君」です。
でも目指しているのは整備士であってスロプロではないので
金銭的に辛くなると最終手段として利用しているといったカンジです。
ちなみに私はスロットに詳しくないので、上の文でおかしい所が一杯あるかもしれませんが目をつぶってください(笑)
今時のパチスロ店は女性も多いと思うのであまり浮かないかもとかBGMも昔みたいにデカくないんだろうなーとか思ったり。


しかし絵を見てみると〜兄さん寒がりですね!(爆)ポプってキャラ同士の季節感をついつい無視してしまう(笑)

04/10/26


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