「しかし…。アンタのキャッチコピー、これで初めて例外が出来たな。」 「あん?キャッチコピー?」 「何だ本人のクセに知らないのか。”命を狙われた奴が生き残るのは死んでも無理”…遂に俺って言う例外が出来ちまったな。」 俺はフフンと鼻を鳴らして横目でKKを見やった。 尤もそれを言いふらすなんてバカな事は当然しないが。 だがKKはそんな俺をあざ笑うかのように大きく肩を竦めると盛大な溜息をついた。 「バーカ、お前以外にだって殺せなかったヤツなんて居るに決まってんだろ。」 「何だ…俺だけだと思ったのに。でもKのオッサンに狙われて殺されなかったヤツなんて一体どんなバケモンなんだよ?」 「あーそりゃお前…。」 そこでKKは口を噤んだ。 どうやら情報を引き出され始めているのに気がついたらしい。 「そんな事はどうだっていい。それよりも俺の方から聞きたい事がある。」 「何?」 「何でお前こんな物騒な事してんだ?自分を一般人って言い張ってるのにコッチに首突っ込んでくるってこたぁ、何かしら理由があるんだろ?」 「人を探してる。」 ただそれだけ、俺は簡潔に答えた。 「なんだ人探しか…。何だったら俺も手伝ってやろうか?さっきの詫びによ。」 「いや。…いい、アンタに言った所でどうせ笑われて終わりだろうし…それに。」 「それに?」 「自分探しっていうのは、自分でしなきゃ意味がないだろ?」 ― こんなに驚いた顔をしたKKを見たのは初めてだった。 日本でいう「ハトがマメ鉄砲食らったような顔」ってのはきっとコレの事だ。 それくらい最高に面白い顔だったが、KKが驚いた理由が俺の"自分探し"という発言なだけに正直ムカついた。 「自分…自分探しぃ?あの、自分とは一体何なのか!?…ってのを探す為に、あれこれ試行錯誤する、青春なアレ、アレかッ!?」 「…悪いか。」 そう言って俺は冷めた緑茶を一気に飲み乾した。 底に残った茶葉が苦くて思わず顔を顰める。 「い、いや、マジでか、ン、そうか。…ブフッ」 「ほらみろ!笑ったじゃないか。」 「ン、あ〜笑って悪かった。ま、これだけ危険な世界にいれば本当の自分が見つかるかもしれねぇけどなぁ。あまり無理は…」 そう言ってまた笑いを堪えるKKから俺は視線をそらした。 …笑われても仕方ない。 自分でもそう思う。 でも、それでも、俺は探すのを諦めようとは思わなかった。 →5 |