バイクを見ながら会話をやり取りをしている内にこの青年が本当に俺とよく似てるという事が分かってきた。
 容姿、職業、趣味、趣向…他にも探せばいろいろありそうだ。
 ただ目の前の青年は自分よりも…簡単に言うならば、「大人」に感じた。
 優しいのにどこか酷く荒んだ印象を受ける…でもその荒みを優しい笑みの内に上手く隠し込こんでいる、そんな大人。
 漠然としているが俺にはそう感じた。



「ああそうだ、まだ名前言ってなかったな。」

 油に汚れた手をつなぎでゴシゴシと拭くと手をコチラに差し出し、青年は俺に向かって微笑みかけた。

「俺はヒュー、君は?」

 その問い掛けに俺は内心舌打ちした。

― 名前まで一緒なのか。

 ここでバカ正直に「俺もヒューです。よろしく!」なんて言ったら絶対に引かれる、気味悪がられる。
 最悪、運良くめぐり合えたこの整備場から追い出されるかもしれない。
 それは困る…俺は咄嗟に偽名を答えた。

「俺はリュウ、ヨロシク。」

 …Ryuっていうのは俺がネット上で使っていた偽名、いわゆるHNだ。
 偽名で突然呼ばれても使い慣れたHNならばごく自然に受け答えができるだろう。
 実はちょっと昔にハマった格闘ゲームの主人公からテキトウにとってつけた名前なんだが…こんな形で役に立つとは。

「リュウか…ちょっと名前も似てるな、こちらこそヨロシク。」

 そう言って俺の手を強く握るとヒューはまたにっこりと微笑んだ。





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