「これはちょっと酷いな…パーツを交換しないとダメそうだ。」

 すっかり焼けついて壊れた後輪のパーツを眉を顰めて見つめていたヒューがこちらへと視線を移す。
 こんなになるまで酷使しちまうとは、整備士失格だな…。
 俺は溜息をつきながらヒューに自分の職業が整備士である事を告げなかった事に内心安堵した。

「このパーツだと取り寄せに4日から…そうだな、長いと一週間くらいかかるかな。」
「そ、そんなに掛かるのか!?」

 俺は正直焦った。
 仕事の休暇の方は大丈夫だとしても金がヤバい。
 どこかの安ホテルに泊まるにしても一週間は流石に無理だ。

 困惑した俺の様子を察したのかヒューが顔をこちらに向けた。

「時間が掛かるのはまずい?」
「…ん、ああ。結構遠方から来ているからバイク置いて公共機関で帰るか直るまでどこかに泊まらなきゃいけないんだけど…その。」

 ああ、とヒューが声をあげた。
 多分ヒューもバイク乗りだろうから金の事に気がついてくれたようだ。

「だったらパーツが来るまで家に泊まるか?丁度妹は部活の合宿で居ないし、俺しか家には居ないから。」

 …妹の名前は聞かないでおこう、と思った。
 一体どのくらいこの青年は俺と"被って"いるんだろうか…?
 ただこの時ちょっと気味悪くなるのと同時に俺と瓜二つで境遇までよく似ている青年に強く興味を持ったのは事実だ。

 どちらにしろ手持ち金がない俺はヒューの申し出を有難く受ける事にした。





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