「あ、そうだ!写真一枚撮らせてよ!こんないい男が二人並んでる所なんて滅多にないからねえ。」

 感心した様子で頷いていたオバサンは急にそう言うと鞄からデジタルカメラを取り出しコチラへと向けた。
 デジカメ持ち歩いているなんて最近のオバサンは若くてハイテクだな…。

「えっいやでも…。」
「どうせだから撮ってもらおうぜ。」

 カメラを向けられて尻込みするヒューの肩に腕を回し顔を覗き込む。

「ん、リュウがそう言うなら…分かったよ。」

 少し強張っていた表情を緩めるとヒューは俺の肩に手を置いた。

「じゃ、オバサンよろしく。」
「もう一枚撮っちゃったよ!自然な男同士の触れ合いってカンジで素敵だったから思わずねぇ〜。」
「げ、盗み撮りかよ…!ちゃんと撮ってくださいよ。」
「はいはい、じゃあ撮るよ!」

 直後、シャッターの擬音が小さく耳に届く。
 オバサンは暫くデジカメのディスプレイをニコニコ…というよりニヤニヤしながら眺めていた。
 どうやらよほど気に入ったらしい。

「オバサン、ソレ出力したら記念に俺にも一枚分けてください。」
「あいよ、まかしときん!」

 小さな宅配用のトラックに乗り込むとオバサンは俺に向かって親指を立てた。
 軽快に走り去っていくトラックを見つめていたヒューがふと何かを思いついたのか整備場の時計を見た後俺の方に向き直った。

「なあ折角の定時上がりだし今夜飲みにいかないか?俺奢るからさ…っても飲み放題の居酒屋だけど。」
「え?いいのか?」
「うん、飲みながらいろいろ話したいしさ。…あ、明日も仕事なんだけどリュウは酒強い?翌日二日酔いになると大変だろうから酒に弱いなら今日じゃなくて土曜の夜とかにするけど?」
「ああ。それなら大丈夫、俺かなり酒は強い方だから。」
「そっか、それなら安心だな。」

 実は俺もかなり強いんだよ、と言ってヒューにしては珍しくニヤリと笑った。



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