俺が泣き止んだ頃には既に夕日は海に沈み、綺麗に瞬く星が空いっぱいに広がっていた。
顔を上げると海からの冷たい風が頬を掠め、思わず身をふるわせた。
ヒューはそんな俺を風から守るように強く抱きしめて、心配そうにこちらの顔を覗きこんできた。
「リュウ、寒い?」
「いや、大丈夫…。」
それよりもずっとヒューの腕に抱かれている事が恥ずかしくなってきて、俺はヒューから身体を離した。
今はヒューと視線を合わせるのも気まずい感じがして、俺は星空を見上げた。
「綺麗だな…。」
「ああ。」
海から見上げる星空は本当に美しい。
東京ではなかなか見る事が出来ない流れ星も、30分も空を見上げていれば何個も見る事が出来た。
星が流れ落ちる度に、どんな願い事をしたんだ?とヒューとくだらない話題で盛り上がった。
しかし流石に数時間もそうしていると夜の寒さが身に染みて辛くなってきた。
もう暫くヒューと景色を楽しんでいたかったけれど、寒さを我慢して風邪をひいてしまっては元も子もない。
丁度アルコールも抜けた頃だったのでKKのマンションへ帰る事にした。
暗い山道を転ばないように戻り、夜の帳に溶け込んだ車に乗り込む。
そしてマンションへ向けて車を走らせていると、途中からヒューの規則正しい寝息が助手席から聞こえ始めてきた。
「…ったく、本当によく寝るよなあ。助手席で寝るなんてマナー違反だぞ。」
愚痴を漏らしながらも俺は内心安堵していた。
正直、あの丘での事が流石にまだ気恥ずかしかった。
綺麗な夕焼けと星空が見える海沿いの丘で、男が男の腕の中で散々泣き散らかしたのだ。
他の人間に話したらあらぬ誤解を招きそうな内容だ。
「……。」
信号待ち、隣で眠るヒューの横顔を見つめた。
もう明日のこの時間には、ヒューと一緒にいる事は叶わない…。
いっそ今この時間が永遠に続けばいいのに。
そんな俺の想いをよそに信号は赤から青へと変わり、俺はアクセルを踏みつけた。
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